第1回 Aida
みなさんはオペラという言葉を聞いて、どのようなイメージが湧きますか?
豪華絢爛な舞台で歌手がホール全体に響き渡るほどの声量で歌い、オーケストラが更にそれらの曲を盛り上げる。
よく耳にする曲の多くは、オペラの中で一人だけで歌うアリアなどが多いかと思います。
しかし、実はオペラでは合唱がなくてはならい盛り上げ隊になることもしばしば。
そして、合唱が歌う曲にも実は耳馴染みの曲が多く存在します。
このシリーズでは普段あまり意識して聞いていないオペラの中の合唱曲にフォーカスを当てて連載していくこととします。
記念すべき第1回は誰もが一度は耳にした事があるであろう、オペラ『アイーダ』より「凱旋行進曲(がいせんこうしんきょく)」を取り上げます。
「凱旋行進曲」という名前もそうですが、メロディを聴くとあるスポーツをイメージする方が多いのではないでしょうか。
そもそも『アイーダ』ってどんな作品なの?
タイトルは聞いた事あるけど、話はあんまり知らないわ・・・
そうですよね。みなさんの心の声受け取りました。
それではまず『アイーダ』についての解説から入りましょう。
そもそも『アイーダ』って?
この作品は、オペラ史において欠かすことのできない重要なイタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)によって作曲されました。
彼はこの他に『椿姫』や『ナブッコ』など多くのオペラ作品を世に残しています。
『アイーダ』は全4幕からなる作品で、演出では壮大な舞台装置を使う事が多く、まさに豪華絢爛なオペラの代表格ともいえるでしょう。
物語の内容は?
舞台は、古代エジプト。エチオピアとは敵対関係にありました。
そのような状況下でエジプトの将軍ラダメスは、敵国の王女という身分を隠していたアイーダと愛し合うようになります。
やがて戦争はエジプトが勝利し、ラダメスが軍を引き連れに凱旋します。
(ちなみに、戦いに勝って国に戻ってくることを”凱旋”と言います)
この勝利をアイーダに捧げたいと思っていたラダメスですが、エジプト王は自分の娘と結婚し、自分の後継者となるよう命じます。
しかしラダメスはそれには応じず、いつの間にか敵の策略にはまってしまい、彼は祖国エジプトを裏切ります。
裏切りの罪によりラダメスは生き埋めにされることが決まるが、そうなる事をあらかじめ予測していたアイーダは彼と共に死ぬ事を決意し、なんと彼が連れてこられる地下牢で待っていたのです。
二人は永遠の愛を誓い、この世に別れを告げます。
『アイーダ』は音楽の教科書に掲載されていたり、ミュージカルや宝塚で取り扱われるほど世界的に有名な作品ですが、とても悲しい恋の物語だったんですね。敵同士で好きになって悲劇で終わってしまうとは、まるでエジプト版ロミオとジュリエット…
ん?なんかちょっと違う?まあそれは置いておきましょう。
ところで、肝心の「凱旋行進曲」ってなんだろう?
お待たせしました。本題の「凱旋行進曲」に移りますね。
今回紹介する「凱旋行進曲」は、第二幕第二場でラダメス率いるエジプトが戦争に勝利し、凱旋する場面で演奏されます。
The Operaと言わんばかりに、兵隊たちをはじめ大勢の合唱の人々と豪華な舞台装置が続々と登場し、聴覚だけでなく視覚でも聴衆を楽しませるのがこのシーンです。
この楽曲は、アイーダ・トランペットというこの楽曲を吹くためだけに作られた楽器が用いられ、それを舞台上で演奏される事が習慣にもなっています。
サッカーの応援では「オオー! オオオオッオッオッ、オオオオーオオ、オーオオオオ、オーオオ、オーオオ、オーオオー!!!!!!!」と全てオーと歌っていますが実はこの部分こそ、アイーダトランペットが奏でているのです。
(時間のない方は、3分30秒あたりから聴いてみてください ↓↓ )
では、合唱はどのようなことを歌っているのでしょうか。
歌詞はみてみましょう。
Gloria all'Egitto, ad Iside che il sacro suol protegge !
Al Re che il Delta regge Inni festosi alziam !
エジプトと神聖な大地を守るイシスに栄光を!
デルタ地帯を治める王に喜びの賛歌を高らかに歌おう!
S'intrecci il loto al lauro sul crin dei vincitori !
Nembo gentil di fiori stenda sull'armi un vel!
Danziam, fanciulle egizie, le mistiche carole,come d'intorno al sole danzano gli astri in ciel!
蓮と月桂樹を編み込み勝者たちの頭へ!
たくさんの優美な花々を武器の上にヴェールのように広げましょう!
踊りましょう、エジプトの娘たちよ、神秘的な輪舞を、太陽の周りを天の星々が踊るように!
Della vittoria agl'arbitri supremi il guardo ergete;
Grazie agli Dei rendete nel fortunato dì.
勝利を与える至上の支配者にまなざしを捧げよう
この幸運の日に神に感謝を贈ろう
Vieni, o guerriero vindice, Vieni a gioir con noi;
Sul passo degli eroi, I lauri, i fior versiam!
来い、復讐の戦士よ、私たちと一緒に喜ぶために来い
英雄たちの歩みの上に、月桂樹や花を注ごう!
この国の勝利を強調するように、エジプト(Egitto、egizie)という単語がこの中では二度出てきますね。舞台の豪華さに負けないくらい多くの民衆や司教が戦争での勝利の喜びを高らかに歌い上げています。
そう、それはまるでサッカーを応援してる大勢のサポーターのよう…
サッカーを応援する曲としても勝利を喜ぶといった意味ではぴったりの選曲ですね!
この歌詞の内容や意味を知ることで、今まで以上にサッカーの応援に熱が入るのではないでしょうか。
今回は第1回ということで、作品名としても有名なアイーダを取り上げましたが、実はオペラというのはみなさんの日常生活のあちらこちらで流れているのです。
あなたがよく耳にする ”アノ曲” も実はオペラの中のメロディかもしれません…!
ぜひ、その元となっている楽曲を聴いて、そこからさらに興味を持たれた方はオペラを鑑賞してみてくださいね ♪
それではみなさんまた次回! Arrivederci!