オペラ。日本語では「歌劇」と呼称されますが、元々はラテン語で「仕事」の意味。華々しい舞台の上の世界は、劇場における氷山の一角でしかありません。「オペラのウラのウラ」では、VOTメンバー・竹内の経験等も踏まえながら、客席からは見えないたくさんの「仕事」を担う裏方の世界をご紹介せずに劇場のアレコレをご紹介していく「ホールの豆知識」シリーズ第三回!
劇場には、装置や幕などいろいろなものが専用の装置によって吊られています。今回は、その中から「幕」にスポットを当ててご紹介していきます!この”吊り物シリーズ”だけでも数回かかると思うので、しばらくは「ホールの豆知識」シリーズも続きそうですね!
っていうかもう1ヶ月くらい裏方紹介してないんだから冒頭の文章変えればいいのにね。
ね。
【まずは基本の「き」!袖幕】
舞台の上手下手に垂れ下がっている幕です。(画像参照)
昔演出助手で携わった際の舞台写真。
あ著作権対策でモザイク処理済
袖中が客席から見えないように隠すため、そして出演者の出ハケの管理や交通事故防止のためなど、様々な意味を持っています。各袖幕は面から順に1袖、2袖…とナンバリングされ、出演者のスタンバイなどのために情報共有されます。
オペラ現場デビューするとまず言われるのが「袖幕には触らないで!!」のひとこと。少しでも触れると全体が大きく揺れるため、そこに人がいることが分かってしまいます。熱い愛の二重唱とか歌ってる後ろで幕がゆらゆらしてたら気が散りますよね。そういうことです。
あと、袖幕用の布は遮光性と耐久性に優れた巨大な布であり、当然非常に高価なもの。万が一破損したら大変なことになるので、スタッフ以外は触れないのが吉です。
【これにも名前あります。文字幕】
上のこれ(画像参照)です。「もんじまく」と読みます。袖幕と同様、舞台前から順に「一文字(いちもんじ)」「二文字(にもんじ)」とナンバリングされますが、これは出演者のためというよりも、スタッフ間での上げ下げ操作をやりやすくする工夫です。
これは上部に吊ってある照明や装置を隠すためにあります。あと、これあったほうがなんか締まるよね。絵的に。
そう、絵的な釣り合いのために、この文字幕は仕込み後に微調整することがほとんどです。
【これを知ってたら玄人!?東西幕】
これは客席からあまり見えない…もとい、袖幕だけじゃ袖中を隠すことができない場合に吊る幕です。こんな感じ↓↓↓に吊る幕を「東西(とうざい)幕」と呼びます。
たくさんお世話になっている舞台監督集団ザ・スタッフのホームページより。
その昔野外劇場において最大の照明装置は太陽でした。太陽光を最も受けられる「南向き」に舞台を組んだ名残で、上手が「東」、下手が「西」になることからそう呼ばれています。「東西を隠す幕」という意味ですね!
【便利な引き割り幕】
「中割幕」とも言います。手動または電動で動き、上手下手から幕が閉まることで舞台の中央部付近を二分し、客席からは前半分しか見えなくなります。幕の後ろで転換したり次の場面のスタンバイをするなど、意外と便利な幕です。
【個人的に大好き♪紗幕】
ごく薄い布で作られた幕です。照明が消えているときはただの黒幕に見えますが、紗幕より後ろの照明がつくと、その部分が透けて見えるようになります。霞んだ感じに見えるので、幻想的な雰囲気を作ることができます。
こんな風に、ホログラムを投影したりもできます。すごいかっこいい。
ちなみに破れやすい幕No.1です。プロ以外は絶対に触らないようにしましょう。
【裏方的にありがたい。暗転幕】
黒くて真っすぐ、皴のない幕が舞台前部にあります。上演中は基本的に見えないところに飛ばしてありますが、これを降ろすと客席から舞台が完全に見えなくなります。客席からは「暗転=まっくら」に見えるので「暗転幕」と呼ばれています。
この幕の最大のメリットは、舞台の照明を消す必要がなくなるので、明るい状態で安全かつ迅速に作業することができるようになります。
【印象をガラリと変える?大黒/ホリゾント幕】
一番奥の壁を隠すための幕です。これには二種類あり、袖幕と同じ素材の黒い幕を「大黒(おおぐろ)」、真っ白い真っすぐな幕を「ホリゾント幕」といいます。
ホリゾント幕は、舞台奥の壁に色のある照明を当て、背景色を作る時等に使います。なお、背景画を描いた大きな「背景幕」を吊る場合もありますが、これはとてつもなく大きなプロダクションでしょう。
【劇場の顔!オペラカーテン】
オペラやバレエで使う特別なカーテンです。深紅のベルベットに装飾をあしらった物が多く、真ん中で分かれている引き割タイプです。
斜めに引き上げられて開くことが多いですが、左右に開く/上に飛ぶを含めて3パターンの開閉に対応しているのが特徴です。
【意外といろいろ、幕の種類】
ひと口に「幕」と言っても、これだけたくさん種類があるんですね!もちろん紹介しきれてないものもあります。
もちろんこんなの知らなくてもオペラは楽しめますが、「お客様の意識を舞台上に引き込む仕掛け」のひとつが「幕」の役割だと思います。操作する裏方さんのセンスと技術も出ますしね!
次回も「吊り物シリーズ」でいきます。ちょうど今携わってる旅公演では照明仕込みをお手伝いしてる事だし、照明機材でも紹介してみようかな?
…どんどん舞台オタク感あるコンテンツになっていきますが、次回もどうぞお楽しみに…