メイン会場の一つ、Filene Centerの内部
7月頭〜8月頭まで、アメリカはヴァージニア州のWolf Trap Opera(ウォルフ・トラップ・オペラ)なるプログラムに参加して参ります。
Wolf Trap Operaは、伝統と格式ある夏期のヤングアーティストプログラム。
米国オペラ界におけるヤングアーティストプログラム(YAP)というのは、平たく言えば「お給料を貰いながら訓練が受けられる」というプログラムです。
私が現在在籍しているメトロポリタン歌劇場のLindemann Young Artist Development Programは、通年型のYAP。Wolf Trap Operaは夏期YAPということです。
Metのプログラムを始めたばかりの昨年9月に、Metのコーチに勧められてオーディションを受け、3人のコーチング・フェローのうちの一人として受け入れていただくことになりました。(オーディションでティレジアスの乳房の「いいえ、旦那様」のアリアを弾き歌い炸裂させた話はまた今度…)
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さて、このWolf Trap Opera(WTO)、新型コロナが未だ猛威を奮う中、一体どうやって開催されるのか。
WTOは通常、3ヶ月かけてオペラの大規模なプロダクションを3本、付随イベントとしてコンサートやマスタークラス、ワークショップを行うという性質のものです。
しかし、今年は大規模なプロダクションは不可能。ヴァージニア州の「自宅待機令」が、かなり早い段階で6月まで決定したために大道具製作が間に合わないということで、とりあえずフルプロダクションは断念。
そこで、素晴らしい制作・音楽チームが考え抜いたプランは以下の通り。
・7月の前半2週間、参加者たちは全員現地のホテルにて隔離。その間、オンラインでコーチングを行う。
・2週間の隔離を経て、感染者がいないことが断定できたら、ソーシャルディスタンシングをしながら、対面でのリハーサルを開始。
・これらのリハーサルを経て、アリアやオペラシーンの映像を録り、それらを配信する「バーチャル演奏会」を行う。
・歌手にとっては、舞台用の演技ではなく、カメラ用の演技を学ぶ機会となる。
・リハーサルスペースは、屋内なら大きなスペースを少人数で使うという形。小さなスペースは個人利用に限る。スペースに入る前に、全員検温。スペース内では噴霧型(?)の消毒剤の利用や、ピアニストと歌手の間のアクリル板の設置など、全員の安全のための措置が図られる。
ちなみに、もちろんホテル等は主催が提供。お給料もこの上なくしっかり出ます。。なんとありがたい😭
夏期YAPというのは全米各地にありますが、実際に対面で実行されるのはアメリカの中でもこのWolf Trap Operaだけだそうです…。というわけで、今回のWTOはある意味、アメリカにとっての実験台。
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アメリカ新参者の身で、WTOの最高にクールで親切な制作&リーダーシップのもと、この状況下で「現場」をいただけることが、有難くてなりません。現地の様子もこちらでレポートしていきたいと思います!