あんまり注目されない、でも面白い、本気出せば主役だってくっちゃうぜ!な名脇役たちを救済する夢のシリーズ☆
『名脇役シリーズ』記念すべき2021年2発目はモーツァルト作曲《後宮からの逃走》!!
(前回の予告で夫婦を紹介!とか言ってましたが、そちらはもう少し勉強してからにさせてください‥‥)
初演:1782年7月16日 ブルク劇場(ウィーン)
原作:クリストフ・フリードリヒ・ブレッツナー
台本:ゴットリープ・シュテファニー
毎度お馴染みモーツァルトさんのドイツ語のオペラです!
異国情緒溢れるエキゾチックな「救出劇」オペラです!
制作の裏で台本のシュテファニーさんが原作のブレッツナーさんの許可を得ずに勝手に使っちゃって揉める、というエピソードもあるようですが、今日は触れません(ヒェー)
どんなお話?
→舞台はトルコにある太守セリムの館。スペイン貴族のベルモンテは海賊に攫われた恋人のコンスタンツェを助けに遠路はるばるトルコまでやってきました。攫われたのは、コンスタンツェ、そしてその侍女ブロンデ、ベルモンテの従者ペドリロの3人。コンスタンツェは太守セリムに想いを寄せられていて、ブロンデとペドリロは屋敷で働いています。ベルモンテは3人を助けるため奮闘しますが、館には番人のオスミンが目を光らせていて‥‥
無事4人はスペインへ戻ることができるのか!?
と言ったような話です。
相関図を見てみましょう。
主従関係、恋人関係、横恋慕と、わかりやすい人物関係ですよ!
さてそんな中今回注目するのは、
太守セリム
実はこちらの人物、一切歌いません!
ええーーーーー!
そうなんです、歌わない、台詞だけの役なんですよね。オペラなのに??
なんて思いますが、実は時々こう言った役所は存在します。以前紹介したヨハン・シュトラウスⅡのオペレッタ《こうもり》なんかにも、フロッシュという看守が登場しますが、そちらも台詞だけの役です。
なので、最近では有名な俳優さんや、お笑い芸人さんなどが出演して舞台を沸かせてくれますね。
こちらの太守セリム。奴隷として連れてこられたコンスタンツェに恋をして、愛人にならないかと提案しますが、当然ながらコンスタンツェは恋人がいるので頷きません。
でもまぁ、この方、なかなか紳士でしてね。素敵なんですよ。
こっからネタバレです‥‥‥
実はセリムは、ベルモンテの父に愛する人を奪われ、地位名誉金までも奪われる過去がありました。それが判明して絶体絶命のベルモンテでしたが、セリムは、
「私は君の父を嫌っているからこそ、それに倣おうとは思わない。悪を悪で返すより、悪を善で返すほうがより大きな喜びだと思うからだ」
と、自由にしてくれるのでした。
‥‥なんていい人。許すってとても難しいことですが、それができる人ってすごいですよね。めちゃかっこいいです。惚れる。
登場人物の中で唯一歌わないからこその貫禄、落ち着き、言葉の大切さが求められる役です。
是非是非《後宮からの逃走》ご覧の際は、太守セリムに注目してください!
次回予告
→どこか憎めない!同作からオスミン紹介しましょう