あんまり注目されない、でも面白い、本気出せば主役だってくっちゃうぜ!な名脇役たちを救済する夢のシリーズ☆
『名脇役シリーズ』記念すべき第1弾は
モーツァルト作曲《フィガロの結婚》!!
初演:1786年5月1日 ウィーン
原作:ボーマルシェ「フィガロの結婚」
台本:ダ・ポンテ
そもそもモーツァルトってどんな人?
→200年くらい前に活躍した作曲家です。35歳の若さで亡くなりますが、沢山の作品を世に残しています!
さてさて、では今回取り上げる《フィガロの結婚》とは?
→フィガロとスザンナが結婚する当日のドタバタ喜劇!一言で言うとこんな話ですが、なにせ休憩入れると4時間もかかっちゃう長いオペラ。もうとにかく事件が起こりまくります。相関図を作ったのでご覧ください。
何だかよくわかりませんね。簡単に説明すると、伯爵と伯爵夫人は結婚して3年目。そろそろ倦怠期が訪れる頃。女癖がよろしくない伯爵は、伯爵夫人の侍女スザンナにお熱な様子。しかしスザンナは伯爵の従者フィガロと結婚予定。「権力使って寝取ったる!」と実に汚い伯爵ですが、スザンナ、フィガロ、伯爵夫人はチームを組んで伯爵を懲らしめようと奮闘します。
この4人だけでも十分面白そうですが、実はこのオペラは名脇役の宝箱。脇役を入れた相関図もご覧ください。
いよいよ何が何だかわかりません!実はネタバレになるのでここでは書けない矢印が他にもいくつも…おいおいむしろ4時間で大丈夫か?いや大丈夫です。
とにかく、ようやく本題に入れそうです。美味しそうな脇役たちが沢山いますが、今回紹介するのは、
音楽教師 バジリオ
どんな人物か一言で言うと「嫌な奴」。まぁまぁお待ちくださいな。嫌な奴にも嫌な奴なりに理由があるんです。
バジリオはお屋敷に出入りする音楽教師、お屋敷のいろんな人に音楽を教えていますが、実は他にもお仕事が…何と伯爵の工作員!伯爵にへいこらして、伯爵のために動く!では具体的にどんなことしているのかと言うと、スザンナに伯爵の想いをこっそり伝えたり、誰が誰を好きとか噂を流したり。正直大したことはしていませんが、それでもお屋敷内でその手の噂は大問題!とにかくいろいろ引っ掻き回します。結果、お屋敷を代表する嫌われ者ですが、めげない性格と面白さと立ち回りで割と人気があるキャラクターだと私は思うなぁ(筆者:鈴木)。
そんなバジリオは人の噂話ばかりで、なかなか自分のことを話しません。しかしようやく、なんと4幕にて!もうほとんど大フィナーレ直前で自分の話を始めます!筆者が噛み砕いでその内容を紹介します。
バジリオ「みんな耐えていることなんですよ。偉い人と喧嘩しても、90%の確率であっちが勝つんです。私も若い時は情熱に溢れていて無鉄砲でした。でもね、いろんな危険と対面して、学びました。大切なのは『愚か者』であること。辱め、危険、恥、死は『愚か者』であれば避けることができるんですよ」
え、ふっか。深すぎる。
身分の差があるにも関わらず、フィガロは伯爵と対立します。そんなフィガロを見てバジリオはかつての自分とフィガロを重ねてこんな持論を語るのでした。
バジリオ流の世渡り術ですねぇ。『愚か者』でいること、長いものに巻かれることで長生き出来る。バジリオも人生いろいろあって行き着いた答えなんでしょう。正しいか正しくないかは別として、この世渡り術は現代を生きる私たちも共感出来る部分が少なからずあるはずです。
正直、このバジリオの主張は物語の進行上なくてもいいのです。(現にカットされることも多々…泣)さらに、な、なんと!原作にバジリオの主張は登場しません!えー!つまりは台本のダ・ポンテとモーツァルトのオリジナルなんですね。皆さんも心当たりないですか?理不尽な上司、自己中な先輩…ぐっと我慢する時もありますよね。200年前も同じで、そんな悩みがあったのでしょう。
今日は《フィガロの結婚》バジリオについて紹介しました。どうですか?これを読んだ皆さんはいつか《フィガロの結婚》を見た時、自然とバジリオに目が向いてしまうはずです。
何気ない物語の脇役も、とんでもない深いメッセージを抱えていたりします。そのメッセージを知ると、物語全体がぐっと面白くなるのです。オペラは『名脇役』に溢れています。是非『名脇役救済シリーズ』今後もご期待くださいませ!
次回予告
→バジリオのお友達、エロオヤジこと医者のバルトロ先生を紹介!