明けました!
あんまりめでたくない世の中でも、年越しと誕生日と結婚と出産はめでたいぜ!意外とめでたいこと多いな!
さてさて、先日SNSを中心に発表しました新制作・生配信オペラ「桃太郎」の情報は見ましたでしょうか?
実は竹内、この「桃太郎」の初演にも出演していまして。いわゆる「オリジナルキャスト」ってやつですね。
以来、いくつかの作品の初演に携わる機会に恵まれました。
99.9%以上(当社比)が既存作品であるオペラ業界ではなかなか珍しい経験かな?と思いましたので、その辺の話を少し掘り返してみようと思います!
【新作オペラの楽しいところ】
何と言っても「ゼロから人物像を作れる」ということです。
既存作品…例えば「ラ・ボエーム」でロドルフォ役をやろうとすると、自分なりの表現と解釈を模索しつつも、どうしてもパヴァロッティをはじめとする過去の名テノールの姿と声が頭にちらつくんです。僕の場合、これは大きくマイナスに働くことが多く、いつも払拭するのに苦労します。
その点、まだ産声をあげていない作品にはそういったことがなく、純粋に人物像と対話しながら作り込むことができます。変なしがらみから解放されて自由に出来るんですね!
2013年、桃太郎初演。若い…
ちなみに「桃太郎」と6年ぶりに再会して思うのは、「過去の自分を払拭する難しさ」です。
僕は僕のお爺さん役しか知りません(噂によると5,6年前に大阪公演をしたそうですが)。
初演の印象が強すぎて、今の感性で上書きするのが逆に難しい。
【新作オペラの大変なところ】
オファーの段階では作品は構想段階であることが多く、オファーを受ける段階では音域も音楽の性質も役柄も、誰も何も知りません。
普通はオファーを受けたらその作品について調べ、自分に出来る役かどうかを見定めます。これは自分の声を守る上でも大切なことなんですが、初演ではこれが出来ないんです。引き受けてみてから「ちょっと重いな」とか「音域が低いな」と思うことも多々あります。初演キャストを担うということは、そういった不確定要素との戦いでもあったりします。
【新作オペラあるある?①楽譜が無い!!】
オペラって芝居をするので暗譜…楽譜を覚えなければならないんですが、初演は稽古入り時点で楽譜が完成してないこともあります。稽古場で楽譜を渡されて、その場で音楽稽古が始まったりもします。つまり「初見力」=譜読みの速さが成功の鍵だったりします。
桃太郎初演の楽譜。
「桃太郎」初演の時、最後の1曲が届いたのは本番の3日前。稽古場で譜読みと暗譜を同時に行い、そのまま立ち稽古、その後通し稽古…という無茶苦茶をしました。若さって凄いですね!
一昨年は「クリスマス・キャロル」というオペラの初演キャストを務めましたが、こちらは2週間前にはすべての楽譜があったので、安心して取り組めました。まぁ稽古場で楽譜を渡されてそのまま初見大会…は普通にありましたが。
【新作オペラあるある?②楽譜が読めない…】
前述の通り、楽譜がなかなか来ないということもあるんですが、来たら来たで困ることもあります。
ちょっとこちらをご覧ください。
こちらは再演時に書き足された鬼の合唱の手書き譜。僕たちはこれを読み解いて演奏しました。今見ても読めねぇ
まぁ、乱筆で大成した作曲家もいますけどね…ベートーヴェン先生とか…うん…
この楽譜も100年くらいしたら貴重な資料になるのかなぁ…
【オペラ以外の新作初演は?】
オペラ作品以外だと、合唱付きオーケストラ作品が1曲、合唱曲が数えられないくらい。これらはだいたい「攻めた」作品が多く、正直成功と失敗が半々くらいです。
印象に残っている作品は3つ。
ひとつは学生時代の合唱作品の試演会で演奏した同期の作曲専攻の作品。
アカペラ混声4部で、下から全声部が完全4度で積み重なっている作品でした。4度というのは複数重なると調性感が無くなるのでアカペラでやるのは大変なんです。最大限の努力はしましたが、完璧な演奏とはいかなかった記憶が。ごめんね。
ちなみに作曲者は今指揮者となって某有名オーケストラで指揮を振っています。
もう1曲も試演会で演奏した男声合唱曲。チベット仏教の題目?を題材としていて、ほとんど音符が書いてない&仏具の鈴(りん)を叩きながら演奏するというもの。クッソ大変でした。たぶん想定していた演奏効果は出せませんでしたごめんね。
3曲目は正式には初演されていない小曲。以前仲間たちと演奏旅行で行ったザルツブルグで作曲され、立ち寄ったオーベルンドルフの広場で暇つぶしに演奏しました。
これはなんと音源があったのでご紹介します。
そう、この曲の作曲者は「桃太郎」を作曲した柏木さんです。歌ってるのもご本人。
いい曲書きやがるぜコノヤロー!
【初演の裏側ってドタバタ】
歴史をたどってみても、特にオペラの初演はドタバタしがちなようです。
ロッシーニさんとかドニゼッティさんとかは2週間で書いてすぐ初演、みたいな頭おかしいペースでやってたみたいです。すんげぇ。
いっぽうで100回以上の稽古を実施したという記録もあるようで。2年くらい前には完成してたんですかね?不思議。
こんな感じでオペラの初演は行われます。終わってみると嵐のようです。
今回の「桃太郎」もほぼ”改訂初演”と言える内容だと思うので、同じくらいのドタバタになる…かな?
でもすでに超おもしろいので、成功は間違いないでしょう!
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柏木さん!こんな記事読んでないで楽譜の続きください!!
これからも新しい作品の誕生に立ち会いたい所存です。オファーお待ちしてます何でもしますから