オペラ。日本語では「歌劇」と呼称されますが、元々はラテン語で「仕事」の意味。華々しい舞台の上の世界は、劇場における氷山の一角でしかありません。「オペラのウラのウラ」では、VOTメンバー・竹内の経験等も踏まえながら、客席からは見えないたくさんの「仕事」を担う裏方の世界をご紹介していきます。
今回は、前回までにご紹介した「舞台監督」が使う道具をご紹介します。皆さんはいくつ知ってるかな?
【舞台監督七つ道具①メジャー】
いわゆる「巻き尺」です。ホームセンターで売ってるアレです。
ちょっと特殊なのが、「メートル」と「尺寸」が併記されたメジャーを使用することです。オペラはヨーロッパ産の芸術ですが、舞台の寸法は日本の伝統的な単位「尺貫法(しゃっかんほう)」が使われているので、両方が表記されたメジャーが必須なんです。なんででしょうね?興味ある方は調べてみてください。「木材が尺貫法で売られているから」か、「歌舞伎→演劇→オペラと舞台技術が転用されたから」のどっちかだと思います。
これが竹内の使っているメジャー。下の細かい目盛がメートル表記、上の大きい数字が尺貫法表記です。
ちなみに
1寸=3.03cm
1尺=10寸=30.3cm
1間(けん)=6尺=181.8cm
です。
Vivid Opera Tokyoだと寺田氏が身長180cmくらいなので、1間のことを「1テラダ」とか呼んでたり呼んでなかったり。
稽古場でも劇場でも、あるいは準備段階でも役に立ちます。
【舞台監督七つ道具②ペンライト】
舞台袖は常に薄暗いもの。その中でも視界を確保し、安全な移動や細かい作業を行わなければなりません。そのため、腰につけるツールボックスやポケットに入るような、小さなライトが便利なんです。
何度でも言うけど、舞台袖で足元照らして待ってくれている舞監補さんたち、大好きです。(突然の告白)
【舞台監督七つ道具③インパクト】
インパクトドライバー、いわゆる「電動ドリルドライバー」のことです。舞台上で固定や組み立てが必要な場合、あるいは補修が必要な場合、そしてバラシと、あらゆる場面で活躍します。
↑これも竹内の私物。
Vividの道具作ったり、趣味の日曜大工に使ったり。
意外と重宝するよ。
バッテリー式になっていて、どこでも持っていける他、先っちょにミニライトが付いていて暗い場所でも作業が出来たり、ビット(先っちょ)を付け替えてドライバーや穴空けドリルだけでなく、六角ネジを締めるなど、多機能に使うことが出来ます。
【舞台監督七つ道具④パチンッ】
正式名称は「チョークライン」。直線を引くために用いますが、使用には最低3名が必要です。
小型のメジャーのようになっていて、細くて丈夫な紐と粉が入っています。線を結びたい点の片方に紐の先を、本体側を反対側の点に固定します。そして3人目が中間部あたりの紐を引っ張りあげて指を離すと、張力で「パンッ!」を床に打ち付けます。この時に紐についた粉が床につき、直線を引くことが出来ます。
この線はすぐに消すことが出来るので、この線に従ってバミリなどを施した後に影響を及ぼしません。床材にも傷を付けないので、気軽な目印として重宝します。
【舞台監督七つ道具⑤インカム】
いわゆる「無線通信機」のことです。劇場での通信網は有線であることが多いですが、自由に動けなければならない舞台監督と舞監補たちは自前の無線インカムを装着します。劇場入りしてまず行うのが、この無線機を充電するためのコンセント探し。邪魔にならず、バッテリー交換や機体交換をスムーズに行える場所がベストです。
【舞台監督七つ道具⑥バミテ】
「バミ」りに使う「テ」ープでバミテ。「バミリ」は「場を見る」が転じたもので、床に目印となるマーカーを付けることを言います。
バミテ=ビニールテープと思ってる方が多いように感じますが、実際には床材によって使うテープも異なってきます。木製の床材やリノリウム床の場合はビニールテープを使用しますが、ビニールテープが貼りつかないパンチカーペットの場合は布ガムテープを使用することもあります。これらはそのままだと上演中にはがれやすいので、上から透明なビニールテープを貼って保護したりします。
また、どちらもNGの場合、弱粘性の養生テープを使用します。稽古場がほとんどですが、竹内が舞監として携わったホールでも1か所だけそういったホールがありました。
【舞台監督七つ道具⑦油性ペン】
意外と大事なのが黒い油性ペン。マッ●ーとか、普通に市販のやつです。バミテに書き込んだり、掲示しているスケジュール表に変更を書き込んだり、あると無いとでは作業効率が大きく変わってきます。
【ほんとは七つどころじゃないんだけどね…】
他にもハサミとかボールペンとかラバー手袋とかカッターナイフとかetc...、持ってる道具は山ほどあるんですが、ザっとこれくらいは携帯or手の届くところに用意しておき、どのような事態にもすぐに対応できる手筈を整えておきます。すべてはスムーズで安全な舞台運営、そしてストレスフリーな舞台パフォーマンスのため。
道具紹介も今後シリーズ化していこうかな?
計画性がないのが竹内。あんまり期待せずお待ちくださいませ。