オペラ。日本語では「歌劇」と呼称されますが、元々はラテン語で「仕事」の意味。華々しい舞台の上の世界は、劇場における氷山の一角でしかありません。「オペラのウラのウラ」では、VOTメンバー・竹内の経験等も踏まえながら、客席からは見えないたくさんの「仕事」を担う裏方の世界ではなくホールの仕組みを紹介するコーナー第2弾!
今回は「基礎編」に続き、もうちょっと専門的?なホールのアレコレをご紹介します!
ちなみに「中級編」「上級編」を書くかどうかは全く未定です。計画性のない男・竹内です。
【奈落】
犬耳少年が主人公の某有名少年漫画のラスボスではありません。
元々は仏教用語で地獄のことを指しますが、ここでは「舞台の下の空間」を意味します。
ある程度大きな規模のホールになると設置されるのがこの「奈落」で、舞台床下倉庫や舞台下通路、あるいは可変床舞台の動力装置がある床下部屋などの舞台設備を総称してこう呼ばれます。
これの≪6≫が奈落ですね、以前新国立劇場の「ドン・ジョヴァンニ」にて、地獄落ちシーンで奈落部分からたくさんの手が伸びてきてジョヴァンニを引き込んで行ったのがすごく印象的です。余談ですが、当時タイトルロールを演じたクヴィエチェン、すごく好きな歌手だったけど今年48歳にして引退しちゃいました。なんでも演出家になるんだとか。うちの理事長といい、バリトンは演出適正高いのかな?
【迫り】
「せまり」ではなく「せり」と読みます。動力装置のついた舞台床で、奈落と舞台をつなぐエレベーターとしての役割が大きいのが特徴です。歌舞伎なんかでは古くから使われてる舞台機構で、昔は人力で動かしてたみたいですね。
この「迫り」を利用して演者を入退場させることもできるのですが、実はいろいろと危険です。過去には死亡事故も何件か起きてたりします。ここで詳細に記述するにはあまりにも凄惨でグロい内容なので、そういうのに興味がある方だけ自己責任でお調べください。本当に危険なんです。
竹内も、「迫りに乗って登場し『誰も寝てはならぬ』を歌う」という大役を仰せつかったことがあるんですが、歌い始める直前までモーターの振動で全身シェイクされて、足腰フニャフニャ状態で歌ったのを覚えています。また、舞監補佐として奈落と迫りの安全確認とキュー出しもやりましたが、これまた気の抜けない仕事で本当に肝を冷やしました。
都内某プロオケの裏方をやっていたこともありますが、本拠地のホールでは奈落が楽器庫になっていました。でもこの時は舞台上・迫り双方に柵を設置し万全な安全対策をとっていたので、安心して働けました。
【リノリウム】
バレエシートとかダンスシートとか呼んだりもします。床材などとして住宅やなんかにも使われてるみたいですが、舞台で使うものはロールタイプのものを必要に応じて床に貼って使います。ちゃんとした貼り方をしないと皴になったり段差が出来たりして危険なので、地味に技術が必要なものです。
柔らかく厚みがあるので、劇場の木製床を大道具や激しい動き、水などから守る役割があります。また、足音を軽減する役割もあり、これがあると舞台上でできることの幅が広がったりもします。演者はリノリウムのつなぎ目が立ち位置の目安にもなって、意外と重宝するんです。
ちなみにちゃんとしたリノリウムはヨーロッパの3社しか作ってないそうで、値段もお高め。当法人もいつか欲しいなぁ。
【パンチカーペット】
リノリウムと同じように床に貼って使います。こちらはフェルトのような不織布素材で、床の保護をしたり足音を消したりします。音を吸収しやすい反面、リノリウムより安価で軽く扱いやすいという強みがあります。でもやっぱり貼るのに技術がいるので、扱える人がいなければ宝の持ち腐れになりかねません。
画像は某オークションサイトより。こんなん出品する人いるんだね…。
パンチにバミリを施すには、木床やリノリウムのようにビニールテープでは粘着力が足りず上手く付かないので、カラーの布ガムテープを使います。バミリが剥がれにくくてイイネ!
【気が付いたら床まとめになってた件】
特に何も考えず書き始めたら「床の豆知識」になってしまいました。てへ。
迫りは大劇場にしかないし、リノリウムやパンチって客席から見づらく視覚効果が弱い上に高価なものなので、小規模団体だと優先順位は低めになっているのが現状。でもやっぱりあるとできることの幅が増えるしいいよねぇ。欲しいなぁ(チラッチラッ)
さて次はどうしようかなぁ反響時間とかそういうので書いてみようかなぁ面白そう。