オペラ。日本語では「歌劇」と呼称されますが、元々はラテン語で「仕事」の意味。華々しい舞台の上の世界は、劇場における氷山の一角でしかありません。「オペラのウラのウラ」では、VOTメンバー・竹内の経験等も踏まえながら、客席からは見えないたくさんの「仕事」を担う裏方の世界を書かなくなって久しいですねメリークリスマス!!
何書こうかいろいろ考えたんですけど、「劇場の仕組みシリーズ」の続きにします。ちょっとずつ専門性高まってきます!
みんなついてこられるかな?
【花道】
某バスケ漫画の主人公ではありません。(この言葉前回も使ったな…)
馬蹄劇場にはほとんどない、あるいはあっても使わないことが多い「花道」ですが、プロセニアム型の劇場、特に文化会館等自治体が所有するコンサートホールにはよくあります。
(劇場の種類についてはこちらを読んでね)
↑ここのことです(調布グリーンホールの画像を拝借しました)
何といっても語源は歌舞伎の「花道」。下手側の舞台から客席に伸びて、役者が出入りします。テレビで歌舞伎役者の密着取材とかやると、よくここが映されますね。花道にもいろいろと起源があるようですが、花=祝儀を受け取ったことから「花道」と呼ばれているようです。
【四面舞台】
これは特大規模の歌劇場しか備えていない特別な設備です。客席から見える「主舞台」のほかに、下手側・上手側・そして舞台奥にそれぞれ主舞台と同じサイズの空間がある劇場舞台を「四面舞台」といいます。日本では新国立劇場オペラパレス及び中劇場、アクトシティ浜松、びわ湖ホールなどがあります。
新国立劇場オペラパレスの図面を拝借。
実は客席より副舞台の方がでかい。
また、類似の構造で「三面舞台」もあります。四面舞台から「奥舞台」を除いた主舞台・上手/下手舞台の計3面を備える劇場で、横須賀芸術劇場なんかがあります。
これは各副舞台にあらかじめ転換後の舞台装置を組んでおくことで、レールなどによって一気に転換できるというメリットがあります。どれだけ複雑で大規模な装置でも一気に動かせ、しかもそのまま保管できるので、特に毎日違う演目を上演する海外の歌劇場では、装置をバラさずに別の演目を上演できるという大きなメリットがあります。日本ではこんな使い方出来ませんけどね。毎日違う演目とか羨ましすぎる…
【回転舞台】
中華料理屋の円卓を想像してみてください。回る台の上に装置を組んで、それが回って情景が変わったら素敵やん?
それを叶えてしまうのがこの「回転舞台」。前述の新国立劇場オペラパレスにも設置されています。メリットはズバり「大規模な転換を素早く省スペースでできること」、そして「それも演出として見せられる」という点。通常は暗転幕または緞帳やカーテンを降ろした中で、大勢のスタッフが総出で転換します。これはお客さんには見せないのがセオリー。だって作業中の裏方さんって「現実」だもんね。
その「現実」を見せずに、スムーズな転換を見せることができ、音楽も止めずそのまま続けられるということはお客さんの集中力を削がないことにつながります。いいことしかないね!
袖から安全確認するのは大変そうですけどね。
【反響板】
これは普通の歌劇場やオペラ公演では使わないことがほとんどです。舞台の周りを巨大な壁=反響版で覆ってしまい、音を客席に効果的に運ぶために設置します。合唱や吹奏楽、リサイタルなどはこのスタイルで演奏することが多いです。
オペラで使われない理由は、
①出ハケが制限されるから
②無機質になるから
③物理的にオペラ公演は不可能になるから
これらだと竹内は思います。袖幕なら、袖幕のウラなら基本的にどこでもハケられますが、反響版は取り付けられた扉からしか出入りできません。往々にして白塗りで少し凹凸のある巨大な板なので、世界観もありません。これがあると装置も組めない他、天井のサスペンションライトやバトンの昇降もできなくなるetc...
いいことないね!
【目に入ってても意外と知らないことってあるよね】
四面舞台なんかは客席からは見えないので、知らなかった人もいるのではないでしょうか?
今は昨今の事情から出来ないと思いますが、バックステージツアーを組んでいるプロダクションなら、チケット代より少し多めにお金を払えばこうした機構も見せてもらえたりします。
VOTでもバックステージツアーとか組んでみたいなぁ。理事長、2年後くらいにいかがでしょう?やらん?あっそう…
そんな理事長は今日が誕生日ですおめでとう!
皆様もいろいろ落ち着いたら、そうしたツアーに申し込んでみてはいかがでしょうか?
【ついでに2020年を振り返ってみる】
2月にVOTのみんなで出演した「椿姫」@白河が遠い昔のようですね!その10日後に一人暮らしを始め、その1週間後に仕事のキャンセルラッシュが始まり、それから半年間は稽古を含めて対面での演奏は全くなく、半年ぶりの生音稽古は涙が溢れそうになるほど嬉しかったです。半年間自分の声とじっくり向かい合い、良くも悪くも「普通」の有難みを知り、結果的にこんな状況でも1歩前に進めたと思えるのは大きな自信になりました。
来年はもっと多くの人に、僕たちの演奏を、舞台を届けられますように。
そしてお客様が安心してそれを享受できる世の中になりますように。
良いお年を!